世界の色が変わった。
眩しく感じていた世界が、物静かな落ち着きを見せている。ひと昔前のノスタルジーのような、哀愁を感じさせるような、そんな世界だ。
だからといって、特段生活に困る訳では無さそうだ。信号の色は判別できるし、料理が不味そうに見えることもない。
それならば、私はこの世界を楽しむことにしよう。以前の世界より、こちらの方が私にとって居心地が良さそうだ。
かちゃり、と眼鏡を直す音が響いた。